Type Project —visible, but invisible.

鈴木 功:タイプデザイナー写真館

臘梅好き

2003年1月19日 石神井


蕪村に、

 さくらより桃にしたしき小家哉

の好句があるが、こじんまりとした家にこそ臘梅はふさわしい。手入れがゆきとどいた古い家なら、なお良い。私にとっては、一年でもっとも待ち遠しい花のひとつでもある。毎日の行き来につかっている道の途中に、まさしく上の条件をすべてそなえた家に臘梅が植えてあるのだ。好きにならずにいられようはずもない。

紀貫之

人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香に匂ひける

 かざりをく臘梅の香や本の上   茶門

臘梅の下には松岡正剛著『日本数寄』(→書籍案内 > おススメ本)。「吉右衛門の梅」で幕をあける。『万葉集』では、梅117首にたいして、桜は35首。梅は「中国からの来訪を告げるシンボル」だったのだ。実はこの写真、一年まえに撮ったものである。臘梅を置くのに適当な背景を探していた折、表紙の白茶と「日本数寄」の文字に魅せられて手にとった。「日本」の文字ぶりは悪くないのだが、「数寄」のふところがもうすこし狭く、左右の払いが梅枝のごとく伸びやかであったなら、もっと「好き」になれたのに。一書の冒頭、吉右衛門の白梅で日本を梳き、第一章を蕪村の白梅で梳き終える松岡氏のお手並みをご覧あれ。私は本書を『日本流』とともに三度読んだ。第三章「数寄と作分」が一等好きです。