四年間通ったごたごた荘も今日が最終日。最初の一年は妻が送り迎えをし、次の一年は私がお迎えを担当し、最後の二年は息子をごたまで送り届けるのが私の日課だった。朝子供たちとじゃれあって、すっきりした頭で仕事場に入るという日常がもう日常ではなくなる。どぎまぎするようなことも何度かあった。ごたごた荘を去ることになった女の子が、ある日すれ違いざまぎゅっと私の手を握った。顔も見ずにである。そのぎゅっという強さがそのまま心をつかまれたような感じで今も忘れることができない。それからもう一件。こちらは二歳の女の子にどぎまぎさせられた話し。私の膝の上に座った女の子が、やおら振り向いて私の頬を両手ではさみつけた。つぶらな瞳で私を見つめ、「りょうのおとう」とつぶやくのを聞き、瞬間(やられる)と思ったものの、ええいままよと覚悟を決めて目をつぶりかけた。そこに彼女の顔がゆっくりと近づいてくる。そうしてちょこんと触れ合ったのは、彼女の鼻と私の鼻だった。満足した彼女は何事もなかったように私の膝を離れ、ほかの女の子と遊びはじめた。これからそうした「ちょこん」や「ぎゅっ」がなくなるのは、ちょっぴりさみしい気がしないでもない。ごたっ子のみなさん、ひとまずさよならです。