仕事場にこもって終日Dプロジェクトのレポート作成。頭をかきむしり意味もなく部屋をうろつく。冴えない頭でテレビをつけたら、ちょうど「プロジェクトX」が始まるところだった。東大寺南大門の仁王修復を追ったドキュメント。仁王修復後の逸話にこそ私は心を揺さぶられた。片腕と恃んだ弟子が、仁王修復後に師匠のもとを去り、地方の名もない仏像を修復する仕事を選んだ。報酬も注目も期待できない種類の仕事にその後の人生を賭け、ちょうど100体を修復したところで弟子は力尽きる。そして仕事場にはやりかけの仏像が二十数体残された。話しはここで終わらない。弟子の意志を継ぎ、残された二十数体の仏像を修復したのは、彼の師匠であった。ひるがえってきょう一日の自分の有り様を思い出すと、まるで哀れな一匹の動物である。「師子相承」の物語がお好きな方には、『花僧』(澤田ふじ子)と『鬼麿斬人剣』(隆慶一郎)をお薦めします。
荒庭をぶざまに飛べり梅雨の蝶 茶門