眼前にあでやかな牡丹が咲いている。といっても本物の牡丹ではなく、カレンダーに描かれた田能村竹田の牡丹である。
昨日、モリサワタイポグラフィスペースで『田中一光とモリサワ〜文字をめぐる軌跡』展を観た。開催前日ということで二階のカレンダー展示をみることはできなかったが、リュウミンのリリースに合わせて制作された「典」と「代」をトリミングしたポスターにしばし足をとめた。この二枚のポスターは、私が大学一年のときに奈良でみた一光氏の個展会場中もっとも強い印象を残した作品であり、造形としての文字に魅力を感じた「初体験」であったように思う。このポスターに釘付けになった十七年前の自分を思い出そうとしたが、あのときの瑞々しい感覚はよみがえらない。ただ、この二文字の大胆さと明快さに今も強く惹かれているのは確かである。そしてその大胆さと明快さが、一光氏のお弟子さんにしっかりと受け継がれているということを、眼前のモリサワカレンダーから感じる。
十七年後のあまり瑞々しくない私は、なりわいとして文字をつくるようになり、十七字の俳句に遊ぶ書体設計者となった。白と黒。間架と結構。空間と点画。
山蟻のあからさまなり白牡丹 蕪村