Type Project —visible, but invisible.

2004年05月31日 月曜日

仕事机に実梅をひとつ転がし置く。目に涼しげなだけでなく、握ると意外なほどひんやりしている。青梅の収穫量は、昨年の七割くらい。実の大きさも七分ほど。

 きびきびと童運べる実梅かな    茶門

2004年05月30日 日曜日

庭の青梅を残らずもぎとり、ただ見苦しいばかりの不精ヒゲを剃り。午睡。寝覚めのアイスコーヒー。

2004年05月29日 土曜日

天理ギャラリー『近世の文化と活字本』展へ。レクチュアが始まるまえに、嵯峨本やきりしたん版などの展示物をひととおり観ておく。天理図書館の所蔵物、特に印刷資料に関しては国内随一。宋元版の収集も半端ではない。

2004年05月28日 金曜日

昼すぎに担当分の文字を作り終え、珈琲休憩。句読点でいえば読点くらいのブレイク。ネット経由で取り寄せていた本に目を通す。

2004年05月27日 木曜日

終日コンピュータにはりついて書体制作。「習うより慣れよ」は「慣れたらあとは楽だから」と続くからこそ説得力があるのだが、その「あと」が続かないような場合には「慣れるまえにちゃんと習え」かもしれない。

2004年05月26日 水曜日

突発的に入った文字の仕事で初体験のツールと格闘。仕事の内容は難しいものではないのだが、ツールに慣れるまでには時間がかかりそうだ。なんでもないはずの作業に手こずる。

2004年05月25日 火曜日

ううむ、仕事がたてこんできたぞ。とりあえず頼まれごとを早めに片付けておいてよかった。小さな棘ほど気になるものだ。ひきつづき第二の波もやってくる。乗りきれるか。

2004年05月24日 月曜日

タイプデザインツールのデモ版をダウンロードして使い勝手を試してみる。Illustratorになじんだ私の手には、すくなくともFontographerよりは描画しやすい。ごたごた荘ロゴタイプの試作完成。お試しページにアップしてもらって確認することに。

2004年05月23日 日曜日

日本の古本屋サイトとアマゾンで目当ての本を検索。名古屋にいた頃に通っていた古本屋さんがヒットしたりすると訳もなく嬉しくなる。午後からロゴタイプの制作。ごたごた荘HPのバナー用にという依頼を受けて。

2004年05月22日 土曜日

台所で嫁さんと子供が針金を使って何か作っている。カルダーの本を引っぱり出してきて、いつのまにやらやじろべえ作りへと発展。「この人(カルダーのこと)、絵はうまくないなあ」とは五歳の息子の発言。たしかに。

 五月雨や子に手すさびの弥次郎兵衛    茶門

2004年05月21日 金曜日

青空の誘惑に負けて神田古本屋街へ。途中竹尾見本帖本店へ立ち寄り、尾川さんと歓談。紙と文字とデザインと。打てば響くとは尾川さんのような人を言うのだろう。古本の収穫はといえば、高価な本に目移りもしたが、平静を保って堅実な買い物に徹した。

 古本の塵を払ふや五月晴    茶門

2004年05月20日 木曜日

雨を聴きながらの仕事はいいものである。高層ビルでの勤務経験を思い出すと、ことにその感が強い。地上数十階にあるビルの内部からは、雨音はおろか雨粒さえ判然としない。雨はいい。そう思える環境で仕事ができることに感謝したい。かわはぎの煮付け、アスパラガス、冷ややっこ。家のご飯が一番。そう思わせてくれる家族にも感謝。

2004年05月19日 水曜日

なせばなるだ。やっとのことでレポートを書き上げた。たとえ小さくともピリオドは貴重である。熟睡できる。節目になるようなはっきりとした「終止点」はさらに貴重である。成長に欠かせない。してみれば、子供時代は誰しもピリオドに満ちている。夕暮れさえも。大人は金を払ってピリオドを打つ。居酒屋で。

 さみだれの路地にくすぶる焼鳥屋    茶門

2004年05月18日 火曜日

仕事場にこもって終日Dプロジェクトのレポート作成。頭をかきむしり意味もなく部屋をうろつく。冴えない頭でテレビをつけたら、ちょうど「プロジェクトX」が始まるところだった。東大寺南大門の仁王修復を追ったドキュメント。仁王修復後の逸話にこそ私は心を揺さぶられた。片腕と恃んだ弟子が、仁王修復後に師匠のもとを去り、地方の名もない仏像を修復する仕事を選んだ。報酬も注目も期待できない種類の仕事にその後の人生を賭け、ちょうど100体を修復したところで弟子は力尽きる。そして仕事場にはやりかけの仏像が二十数体残された。話しはここで終わらない。弟子の意志を継ぎ、残された二十数体の仏像を修復したのは、彼の師匠であった。ひるがえってきょう一日の自分の有り様を思い出すと、まるで哀れな一匹の動物である。「師子相承」の物語がお好きな方には、『花僧』(澤田ふじ子)と『鬼麿斬人剣』(隆慶一郎)をお薦めします。

 荒庭をぶざまに飛べり梅雨の蝶    茶門

2004年05月17日 月曜日

Dプロジェクトの研究レポートがうまくまとまらない。再度資料を読んだり、書きためたメモをひっくりかえしたり。なかなかの難題である。糸口を探り、筋道をつけるのに四苦八苦、慣れない縫い物をしているような気分になる。まずもって針の穴からして小さい。

2004年05月16日 日曜日

「どっこらしょ」と「いててて」があちこちで聞こえる。あちらは嫁さん、こちらは私。「ごめん、ちょっとアレ取って」と頼まれて親の代わりに動く健気な息子よ、アホな親で申し訳ない。

2004年05月15日 土曜日

きらきら、さらさら、ひりひり、ばりばり。こもれび、そよ風、すり傷、腰痛。ごたごた荘運動会。はりきりすぎて大後悔。

2004年05月14日 金曜日

崩落。そう表現するしかないような芍薬の最期だった。活けたばかりの花弁と葉の勢いが印象的なだけに、開花しきったあとの衰えは残酷なほど急速であった。もはやこれまでと思い定め、ゆっくりと手を伸ばし、指がふれた瞬間。すべての花弁は崩れ落ちた。

2004年05月13日 木曜日

AXISフォントの販売から一年が経過した。期待したほどの売上げはないが、それでもタイプデザインという職種が単独で成立しうるという手ごたえはつかんだ。物を売る側に立つようになってからというもの、自分のなかでさまざまな変化があったけれど、スーパーや書店で物の売れ行きを観察している自分に最近気がついた。これまでいかに無頓着だったかということですね。

2004年05月12日 水曜日

眼前にあでやかな牡丹が咲いている。といっても本物の牡丹ではなく、カレンダーに描かれた田能村竹田の牡丹である。
昨日、モリサワタイポグラフィスペースで『田中一光とモリサワ〜文字をめぐる軌跡』展を観た。開催前日ということで二階のカレンダー展示をみることはできなかったが、リュウミンのリリースに合わせて制作された「典」と「代」をトリミングしたポスターにしばし足をとめた。この二枚のポスターは、私が大学一年のときに奈良でみた一光氏の個展会場中もっとも強い印象を残した作品であり、造形としての文字に魅力を感じた「初体験」であったように思う。このポスターに釘付けになった十七年前の自分を思い出そうとしたが、あのときの瑞々しい感覚はよみがえらない。ただ、この二文字の大胆さと明快さに今も強く惹かれているのは確かである。そしてその大胆さと明快さが、一光氏のお弟子さんにしっかりと受け継がれているということを、眼前のモリサワカレンダーから感じる。
十七年後のあまり瑞々しくない私は、なりわいとして文字をつくるようになり、十七字の俳句に遊ぶ書体設計者となった。白と黒。間架と結構。空間と点画。

 山蟻のあからさまなり白牡丹    蕪村

2004年05月11日 火曜日

渋谷のジンギスカン料理屋にて『BOOK DESIGN』の編集に携わった方々と会食。好きが高じて一冊の本となり、二号三号と続けることによってまた別の価値を持ち始める。束ね連ね貫く編集者の「意気」に感応した一夜。「好き」はやっぱり強いです。たいがいのことでは消沈しません。たやすく消沈してしまうようなときには、自分の「好き」か「意気」が不足していると疑ってみたほうがいい。津田さん、二年後の構想ぜひとも実現させてください。

2004年05月10日 月曜日

愛知芸大院生I君のために基本図書リストを増補。これさえ読めばということはあり得ないし、自分で文献を渉猟する楽しみを奪いたくないので、わずかに二冊を追加するにとどめた。一方で、和文タイプデザインのテキストブックが存在しないという事実にも、若干のさびしさを感じないでもない。

2004年05月09日 日曜日

くもりのち雨。頭も体もどんよりしている。うしろの芍薬が背すじを伸ばせといっているようでさぼりにくいな。

 芍薬や雨に幽(かす)かな鈴の音    茶門

2004年05月08日 土曜日

東京の仕事場に戻ると芍薬の花が活けてあった。留守中にたまった作業をしながら、ときおり振り返っては花の容姿を盗み見る。狭い部屋に優等生と二人きりでいるみたいだ。凛冽たり清楚たり。

2004年05月07日 金曜日

昨晩はタカシ・さっちゃん邸に一泊。ナベさん、直樹、森野、玉木らと飲み語らう。翌朝ゴジカラ村の保育施設を見学し、昼は名古屋駅で仕事の打ち合わせ。愛知万博開催まで一年をきった長久手町。人も風景も変わったようで変わらない。容易には変わらないし変えられない。大事な部分を大事にしたいけれど、それがどこなのか、残念ながら時を経なければ分からない。

2004年05月06日 木曜日

午後より愛知芸大にて大学院生との顔合わせ及び打ち合わせ。type&typographyを研究したいという。学生ひとりに対して非常勤講師二名という変則的な組み合わせ。さらに、犬と猿ともいえる講師の組み合わせは反則的といいたいほどだ。どうなることやら。

2004年05月05日 水曜日

ゆうさん宅に大学以前の友人たちが家族をひきつれて集まった。子供の日にふさわしく、男の子四人が二階をばたばた駆け回っている。私と息子はすこし先においとまして、その足で名古屋行きの新幹線に乗り込んだ。

 波風を起こせをのこの鯉幟    茶門

2004年05月04日 火曜日

居間で子供と嫁さんがビーズで何か作っている。人がいると作業に集中できないタイプの人と、いたほうがかえって仕事がはかどるタイプの人があるけれど、私は典型的に後者。よってどういうわけか休日に作業が進んだりする。ゴールデンウイークのおかげで応対が必要なメールが極端に少ないせいもあるが、なければないで商売あがったりという時期でもある。東京強風。

2004年05月03日 月曜日

小降りになったのをみはらって、長命寺へ子供と散歩に出かける。境内で木を見上げている人たちがいたので何かと思って近づいてみると、てっぺんに下りられなくなった猫が一匹、カラスにつつかれていた。石を投げて追っ払っても、隙をみて何度でも猫をつつきにくる。追っ払われるのがしゃくにさわるのだろう、くちばしで木をカツカツやったり枝をむしりとったりと凶暴きわまりない。猫が無事地面に下りるのを見届けて家に戻る。

 五月雨や鴉うごかぬ石畳    茶門

2004年05月02日 日曜日

息子の自転車訓練をすこし。なぜだかすねにあざをつくっているのは私のほう。手なおしした平仮名をすべて並べてプリントアウト、さらに微調整をほどこす。自転車とフォントとどちらが早くリリースできるだろうと軽い気持ちで書いたけれども、本当に競争しているような気分になってきた。ひとりで自転車に乗れるようになったらケーキを買ってあげると約束したとたん、俄然はりきりだした息子に対し、私の場合、自分でニンジンをぶらさげるのも馬鹿ばかしいし。いや待てよご褒美か。それも悪くないな。でも悲しいことに何も思い浮かばない。

 自転車の童よろよろ白つつじ    茶門

2004年05月01日 土曜日

根津美術館の『南宋絵画展』は予想以上に収穫が多かった。牧谿の乱暴と繊細を楽しみ、玉澗の省略と広大無辺にたまげ、徽宋の精緻な筆遣いに酔いしれた。田中一光氏のヒロシマアピールズ・ポスターに使われた鳩は、徽宋の『桃鳩図』がモチーフになっていることはあまり知られていないが、鳩の形態や桃の枝ぶりには琳派に通じるデフォルメがみられ、モダン琳派の一光氏が『桃鳩図』に目をつけたのもうなずける。会場で待ち合わせた磯田先生、西村、玉木と佐々木悟郎さんのスタジオを訪ね、ほどなく五人で小料理屋へ。出羽三山とつぶ貝の刺し身、赤ワインとごりの唐揚げ。