Type Project —visible, but invisible.

2003年12月31日 水曜日

今年の前半はちょっと背すじが寒くなるほど仕事の依頼がなく、ひらきなおって新書体の開発に専念したのだが、いま思えばあそこで馬力を出しておいてよかった。9月から始まった大学勤務が予想以上に大変だったのだ。終わってみれば、5月から販売を開始したAXISフォントに、経済的な面でも精神的な面でも救われた一年だった。AXISフォント関係者のみなさま、AXISフォントをご購入いただいたみなさま、心より感謝いたします。

 つんのめるやうに越しけり去年今年(こぞことし)    茶門

2003年12月30日 火曜日

宛名書きを終えた年賀状をポストへ投函。よほどあたたかい冬なのだろう、もう臘梅が咲いている。おとつい予期せぬ追加修正が入ったタイトルロゴを済ませ、これでいちおう仕事おさめの気分ではある。

2003年12月29日 月曜日

はてしなきかな宛名書き。たまらず古本屋へ逃げ出し、唐木順三の『無用者の系譜』を買う。年末特有のあの侘びしさ漂うなかで読むにはふさわしかろう。

 何に此(この)師走の市にゆくからす    芭蕉

2003年12月28日 日曜日

ずるずる夜更かしをしていたにもかかわらず、午前七時にぱっちり目が覚めた。室温8度。昨夕から始めた年賀状の刷りで両腕の筋が痛む。雑誌類を処分し本棚の空きを確保。指で正方形のパーツを上下左右にスライドさせて絵を完成させるパズル、あれなんて言うのかな、あの要領で本を移動させて2004年仕様の本の配列を目指す。

2003年12月27日 土曜日

東京初雪。町なかの空気も徐々に年末めいてきた。私はといえば、いまだ年賀状に手をつけることもできず、来年への思いばかりがつのる師走の日々なのである。

2003年12月26日 金曜日

「どうしたの眉間のところ」と妻に指摘されたので鏡に顔を映してみると、眉間の真ん中にくっきりと赤い筋が一本。昨晩の帰りの電車で疲れた目を揉み続けたせいだ。二三日すれば消えていくのだが、初めてみる人にとってはちょっとぎょっとするような人相ではある。

2003年12月25日 木曜日

ネット検索でヒットした古書を購入するため池袋の光芳書店へ。広いジャンルの優良古書をリーズナブルな値段で提供している古書店で、年に何度か足を運ぶことにしているのだが、難点はビニール袋に本を入れていること。店員さんにお願いすれば袋から出してもらえるとはいえ、買わずに本を返すときの気分はよいものではない。以下わたしの対処法。三冊ほど気になる本をピックアップして内容を確認させてもらい、そのうち一冊はかならず買うようにする。これなら双方いやな思いをしなくて済むし、本を選ぶ堪も磨かかれる。夕方、勝鬨橋の立ち呑み屋で、小山さん園原さん姜さんと一杯。

2003年12月24日 水曜日

子供をごたごた荘に送ったあと、石神井図書館に立ち寄り予約の本を受け取る。昨日不要とみなした文芸書を三冊をリサイクルコーナーに置いておく。次期タイププロジェクトのリサーチ。書体制作少々。

2003年12月23日 火曜日

書棚のすき間は頭のすき間とつぶやきつつ、処分する本の選定作業をおこなう。いちど手放した本を再度購入することもままあるので、慎重に要不要を決めねばと、迷うほどに読みふけってしまう。処分どころか、別の本を購入する算段をしているようでは終わるはずもない。

2003年12月22日 月曜日

本棚からはみ出した書籍を整理し、視界がすっきりしたところで積み重なった資料に手をつける。お昼お好み焼き一枚半。マーカー片手にどんどこ読みすすめる。

2003年12月21日 日曜日

快晴。鶯谷の書道博物館で会期終了間際の『楷書の歴史』展を観ておくことに。楷書の揺籃期(三世紀)から完成期(八世紀)までの拓本が、過不足なく展示されていた。お昼をさっとすませて飯田橋の印刷博物館へ移動し、前回時間足らずで駆け足になってしまった『ドイツの最も美しい本』展をじっくり味わう。午後二時、本日メインイベントの印刷工房実習と『活字文明開化』展ツアーを開始。多摩美グラフィック2年生の有志32名を二班に分け、印刷実習を木村さんに、博物館ツアーの案内を早川さんにお願いした。本を手に取りページをめくり、活字を組んでプレスする。こういう実感というものは忘れにくい。木村さん、早川さん、ありがとうございました。学生のみなさん、派手に活字を落っことした私のことは忘れてください。

2003年12月20日 土曜日

名古屋の祖父母からもらった図書券を持って、近所の本屋で息子と絵本を物色する。気に入った絵本が見つからず、けっきょく折り紙の本を買うことにした。うちに帰ってさっそく子供とつくってみたが、これがなかなか難しい。きれいに角を合わせて折る手先の器用さや、山折り谷折りなどの符号と図を読む能力が高いレベルで要求される。対象年齢5,6才とクレジットされているイカにトライした息子は、半べそをかいて途中で投げ出してしまった。子供のあとを継いでつくった私のイカもなんかおかしい。

2003年12月19日 金曜日

ちろちろと舌を出すクセ。絵をかいているときの息子が、のってくるとやるクセである。これが出ているときには次々と新しいアイデアが涌いてくるらしく、かきながら、あ、そうだなどとつぶやいている。

2003年12月18日 木曜日

竹橋の東京国立近代美術館でやっているイサム・ノグチの『あかり』展を観る。キュレーターの意図なのかもしれないが、商品見本のような会場構成とカタログには不満あり。家屋のたたずまいと人の息づかいを映す装置としてのあかりをもっと演出してほしかった。毎日新聞社のフォント室を十年ぶりに訪問。そのあと早稲田通り沿いの古本屋を駆け足でまわり、午後六時半、字游工房に到着。鳥海さん岡澤君と飲みに出掛けるも、迷いにまよってたどりついたお目当ての店が貸しきりで入れず。ではまあここにしましょうとなげやりぎみに入った小さな飲み屋が大当たり。お通しで出された牡蠣のふくめ煮をはじめとして、赤身、きびなご、〆さば、にがうり、玉子焼き、常連さんからすすめられた料理はもちろんのこと、どれもこれも旨いうまい。なかでもママさんご推薦の泡盛まさひろときたら‥‥。ああ、酒呑みでよかった、書体っておもしろいなと確認した一夜。

2003年12月17日 水曜日

年内の授業はきょうでおしまい。やれやれと急ぎ足で帰る途中、自宅すぐ近くで車にあてられた。左腕をしたたかにぶつけたが、大したことはなかったので病院へは行かず。9月に多摩美の授業がはじまってから、たて続けに三人の学生が事故で腕を吊り、その締めくくりのようなタイミングで私が事故に遭うとはね。こういう場合、怒りと痛みでまともな言葉がつかえないらしく、阿呆のうわ言ような罵声を浴びせることしかできない自分が情けなくも哀れであった。車に接触した腕の痛みよりも、かっとなって助手席の窓を叩いた拳のほうがよほど痛い。その痛みがまた情けないのである。

2003年12月16日 火曜日

午前、新宿で友人と待ち合わせ、ココアを飲みながら素敵なアイデアを交換しあう。昼食をとる余裕がなく授業に突入してしまったが、研究室の方からいただいたチョコレートのおかげで、さほど空腹を感じず夕方までもった。塩昆布ではこうはいくまい。

 まだ消えぬちさき花火や冬の星    茶門

2003年12月15日 月曜日

昨晩遅くに筒井さんからリニューアル用のレイアウト案が4種類 JPEGファイルで届いた。清潔感があっていずれも良い。レイアウト案を元に、タイトルロゴに手直しを加え3案をメールに添付して送る。

2003年12月14日 日曜日

きのう38度7分まであった子供の熱も、今朝は37度2分まで下がり、咳もかなりおさまった。めずらしく息子から長命寺に行こうと誘われ、うららかなお天気でもあったので、鳩のえさを持って散歩に出掛けた。ごたごた荘に通いはじめるまでは、三日とあけずこの寺に来たものだ。その頃はいろいろな面できつかった。こんなにゆったりとしたこころもちで長命寺を散策できるなんて、鬱勃として歩いた三年前とはえらい違いである。

2003年12月13日 土曜日

ごたごた荘冬まつり。行事の前日になると体調を崩す息子がまたしても風邪で涙目へろへろ状態。練習でははりきっていたそうだが、大きい子劇への出演かなわず。ゆうちゃんにもらった参蘇飲(ジンソイン)という漢方を白湯で飲ませた。咳と鼻水に効いたようだ。印刷博物館のセミナーをキャンセル。

2003年12月12日 金曜日

ロゴ半日、書体半日。制作済み漢字データをMOにフルバックアップ。
あてもなくたどっていったリンク先で、鈴木勉さんの写真と遭遇した。楽しげな宴会の会場で、食べかけのスイカを片手にひとりぽつねんとうつむいている。生前いちどだけお会いしたときの、狭い喫茶店で所在なさげに座っていた鈴木さんの姿と重なって胸が詰まった。

2003年12月11日 木曜日

文京区にある竹久夢二美術館で小塚さんと待ち合わせ。学芸員の方の案内で、木版と装幀を中心に夢二の仕事を観せていただいた。可憐な日本が咲いている、『港屋絵草紙店』時代の草花図案に心ひかれた。一枚の夢二は、一曲の小唄に相当する。

2003年12月10日 水曜日

明け方までタイトルロゴの仕事。ごたごた荘へ子供を送ってから課題に必要なプリントを作成してばたばたと学校へ出掛ける。電車のなかでロゴデザインのチェック。

2003年12月09日 火曜日

月がとってもきれいだな。夕食後に舟和の芋ようかんを食べる。息子は残り半分を手で丸めてお団子状にして食べていた。練り餌みたいであんまりうまそうじゃないぞ。

2003年12月08日 月曜日

畑で収穫したばかりの巨大ブロッコリーを妻に見せられ、床屋に行った。おでんにうどん。慌ただしいばかりの月曜日は、何かにつけて後手に回りがち。

2003年12月07日 日曜日

快晴。息子と長光寺橋公園のフリーマーケットへ。肩たたきと掃除とお皿ふきでためた彼のお金は、悩み抜いた結果、ウルトラマン怪獣のソフビと遊戯王カードに交換された。

2003年12月06日 土曜日

書体制作を半日、ロゴのラフスケッチを半日。畑でとれた落花生を塩茹でにし、熱いうちに家族でほおばる。皮をむく手がとまらない。

2003年12月05日 金曜日

わが家では、使用済みとなったA4の紙は子供の落書き用紙として再利用されている。さいきんA3サイズでまとめてプリントアウトする機会があり、不要分を子供にあげたら彼の書く絵が変わった。A4からA3へ。画面が倍になったことで、絵のなかに「おはなし」の世界が出現した。なるほど規定とか既成はときどき破ってみるものなんだな。

2003年12月04日 木曜日

気分がささくれだっているところに電話があり、憮然とした声で「もしもし」とやったら仕事の依頼だった。なんとか取り繕う。これは午前中の失態。昼下がり、友人宅に送られてきたファックスのデータがちゃんと受け取れないというので、うちのファックスで代わりに受信したところ、こちらでもエラーを繰り返す。要領を得ない送信元との二度にわたる電話のやりとりが終わった直後に電話が鳴った。怒気をかくさず「もしもし!」とやったら、嫁さんの母親だった。取り繕えない。

2003年12月03日 水曜日

学生が来年度に向けてのオリエンテーションを受けているあいだに参考作品を選んだり、ロッカーの荷物整理をしたり。

2003年12月02日 火曜日

八王子から両国までの所用時間を見積もり違え、大幅に遅刻してタイプラボに到着。イラストレーター88から写真植字機の盛衰に話は及び、居酒屋に場所をかえてからは、2003年のフォントビジネスについてもろもろ意見を交し合う。

2003年12月01日 月曜日

5歳の息子にトリックみえみえの手品をやってみせたら、よだれを飛び散らせんばかりに喜んだ。こんなに喜んでもらえるとやってるほうものってくる。反応がダイレクトにかえってくる仕事はおもしろいだろうな。その場その場の工夫が、絶えず技術の錬磨を促すに違いない。いちにち雨模様。