Type Project —visible, but invisible.

『草枕』に、次のようなごく短い回想シーンが挿まれている。禅寺の石段を主人公が登って行くと、門内から下りて来た坊主がすれ違いざまに「何もありませんぞ」と言い捨てて立ち去ったという、ただそれだけの、しかし忘れ難い一場面。全編が春の朧につつまれた『草枕』のこの場面だけは、盛夏か初冬ではないかと勝手に想像している。

 寒菊を束ねる僧の手際哉

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