字面の工夫は俳句の得意とするところ。漢字のみ、ひらがなのみ、カタカナのみの名人芸をご覧あれ。去りゆく秋を偲んで。
柳散清水涸石処々(やなぎちりしみずかれいしところどころ) 蕪村
をりとりてはらりとおもきすすきかな 飯田蛇笏
ワガハイノカイミヨウモナキスゝキカナ 高浜虚子
蕪村の句は、蘇東坡の後赤壁ノ賦「水落チテ石出ヅ」を踏まえての一句。即興で短冊に描いた文人画の趣きあり。第二句は、「をり、とり、はらり」の音韻と、ひらがなの字姿によって芒を視覚化した蛇笏の秀句。虚子の句は、漱石の猫が亡くなったのを知って返電した弔句。電報だから片仮名しか使えないという事情を越えて、片仮名を使わずしてかの猫の滑稽味は出し得ないとまで思わせる。字々俳諧に木雲評釈を追加。木雲、迷う。