貧しいって何だろう?
経済学では、貧困を「1日1ドル以下の生活」と定義している。現在、世界人口60億に対して、1日1ドル以下の生活者は15億人。50年後には、世界人口は90億となり、貧困層は40億人にのぼると試算されている。1日1ドル以下の生活が貧困であるという定義はいかにも明快だが、貧困を把握するための新しい概念を提唱しているインドの経済学者もいる。アジア初のノーベル経済学賞(1998年度)を受賞したアマーティア・セン教授は、「良い生活を奪うすべての要素」を貧困の原因と考えた。曰く「自由とは自分で価値を決められること」「貧困とは自由が欠除した(あるいは奪われた)状態のこと」であり、即ち「所得が低いことが貧困のすべてではない」と喝破した。個々の見逃されている問題の解決こそが重要であり、これまでの経済学の考え方を、自己の利益だけを追求するものとして「rational fool(合理的な愚か者)」と指弾している。セン教授が9歳の1943年、ベンガル飢饉で300万人が餓死したという経験が根底にあることも書き添えておく。それにしても「自由が欠除した状態が貧困である」とは考えさせられる。「自由な貧」が闊歩している井上有一の書をふと思い出した。
月天心貧しき町を通りけり 蕪村