悪筆を直すには、まず字を丁寧に扱うことである、と反論しようのない説を正岡子規が書いているが、まったくその通りである。それにしても子規はとりつくしまのない書き様をする。『病床一尺』にもこんな一節を見つけてドキッとさせられた。「近眼の人はどうかすると物のさとりのわるいことがある、いはば常識に欠けて居るというやうなことがある」これを新聞の連載でやってしまうのだからたまったものではない。でも、こんな新聞のコラムがあったら読んでみたいなあ。子規の随筆はどれも素晴しく面白いが、俳句は月並みを量産した。当然ながら良い句もある。冬の句からふたつ。前句は明治23年、喀血する以前の句。後句は明治29年の病中吟。
あたゝかな雨がふるなり枯葎(かれむぐら)
いくたびも雪の深さを尋ねけり