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書籍案内

おススメ本007

『中国書画話』長尾雨山 筑摩叢書 1965

中国の書画を楽しむにはいくつかのコツがある。それは書画の歴史的な変遷を大まかにつかんでおくことと、技法についての知識を少々仕入れておくこと。これだけでぐっと書画がおもしろくなるはずだ。本書はその二点を兼ね備えた絶好の入門書である。講演録なので、長尾雨山の語りを楽しみつつ中国書画の本格に浸ることができる。長尾雨山は学識が確かなことはもちろん、詩文の才に優れ書も巧みだった。そんな長尾雨山の周りにはいつも中国の香りが満ちており、文人と呼ぶにふさわしい人物であるが、残念なことに著作をほとんど残していない。中国渡航前の明治22年、岡倉天心とともに東京美術学校の創立に尽力したとき、長尾雨山は弱冠25歳。明治末には上海商務印書館の顧問として中国に赴き、12年間を彼の地で過ごし呉昌碩との交遊を深めた。帰国後は京都に居を定めて旧友の内藤湖南や狩野君山を喜ばせ、富岡鉄斎とは書画を通じて往来があった。熊本第五高等学校の教授時代には、夏目漱石と同僚で、漱石は長尾に漢詩の添削をしてもらっていたほどである。ちなみに漱石の漢文は、英語とともにほぼ完璧なものだった。中国文化をまるごと体現しているような日本人がかつていたこと、そしてそういう人物を囲む場所がかつてあったことを時に思い出してみるのも悪くない。

(2001.9/16)