おススメ本006
『書と人と詞〜真行草のすがた』講談社 1982 ¥2400
書や山水画は、肉眼では確認できないほどの微細なレベルで葛藤が起きている。字句以外の部分が字句より雄弁に語ってしまうことだってある。紙の繊維に広がる墨の滲みやかすれ、墨つぎの呼吸や見消(みせけち)などから書き手の決意や逡巡があらわになってしまう。墨書というもの、つまり丸裸である。日本美術文化全集アート・ジャパネスク・シリーズはクローズアップの手法を随所に取り入れて目を楽しませてくれる。シリーズ第六巻にあたる本書は、料紙の美しさでつとに名高い『三十六人家集』の超クローズアップではじまる。妖艶。吐息が文字から漏れている。天皇、僧侶、歌人、文人、武人、芸能者、学者、画家、陶芸家、作家など、くせ者四十八人の書からはどんな声が聞こえてくるだろうか。
(2001.9/16)