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書籍案内

おススメ本003

季刊誌『グラフィックデザイン』勝見勝 芸美出版社/ダイヤモンド社/講談社 1959~1986

勝見勝(かつみまさる)が亡くなって18年の時が過ぎたが、彼に代わるデザイン評論家は誰ひとりとして現れていない。美学と倫理の権化はグラフィックデザインをとりわけ愛した。その道程は、勝見が編集長をつとめた季刊『グラフィックデザイン』誌100冊に刻まれている。最終号が店頭に並んだとき私は18才で、ちょうどデザインを志向しはじめた頃だった。定価3500円、おそろしく高価な雑誌だなと思って買ったことを憶えている。リアルタイムで手にした『グラフィックデザイン』誌はこの最終号一冊きりで、あとは古書店で見かければ買ってくるのだが、それほど出会う機会は多くない。おそらく発行部数が少ないうえに資料性が高いため、デザイナーの本棚から用済みとなることが稀なのであろう。最終号巻末に100冊の総目次がついているので、そのなかから文字に関する記事を拾ってみる。

No.7 (1962.4) 江戸の看板/勝見勝
No.15 (1962.4) ゲルストナーとイデオグラフの問題/勝見勝
No.18 (1965.1) 日本文字の生態/高橋錦吉
No.21 (1965.10) 西安碑林の拓本/原弘
No.27 (1967.4) タイポグラフィに関する箴言集/原弘
No.30 (1968.6) 三人のタイポグラファー/原弘
No.31 (1968.9) 古活字本におけるタイプフェイス/原弘
No.34 (1969.6) 中国と日本の印章デザイン/原弘
No.38 (1970.6) タイプとタイポグラフィー/ヘルムート・シュミット
No.38 (1970.6) タイプサイズの現状と課題/馬渡努
No.39 (1970.9) 新書体開発の機運をたかめたタイポス/神田昭夫
N0.42 (1971.6) オットー・ノイラートとアイソタイプ/マリー・ノイラート
No.42 (1971.6) LoCoS:実験的視覚言語の考案/太田幸夫
No.43 (1971.9) 交通にかかわるヴィジュアル・サイン/村越愛策
No.43 (1971.9) ルバーリンとバーンズの新しい仕事/原弘
No.46 (1972.6) 地下鉄銀座駅のための誘導システムの現状と視覚表示の提案/公共視覚表示研究体
No.47 (1972.9) アジアのタイポグラフィへの第一歩 タイとラオスのタイプフェイスデザイン/原弘 タイ文字/大谷四郎 ラオス文字/深野匡
No.52 (1974.2) アルファベットの建築術 バロッコ時代のひとつの成果/勝見勝
No.53 (1974.3) 李朝の民画/李禹煥
No.53 (1974.3) 第一回アジア地域タイポグラフィ専門家会議/佐藤敬之輔
No.58 (1975.7) 国際タイポグラフィ協会のセミナーに参加して/森啓 Workshop 2の概要/小塚昌彦
No.67 (1975.7) 記号の生態圏 絵と文字の宇宙/杉浦康平+松岡正剛
No.74 (1979.6) 詩・言語における図像への新たな動き/向井周太郎
No.75 (1979.9) 19世紀のタイプフェイスデザイン/田中正明
No.83 (1981.9) 今日の書 井上有一/海上雅臣
No.88 (1982.12) 岩田母型“見事な復活”/田中一光
No.91 (1983.9) 書体裁判について/片岡脩
No.98 (1985.6) モリスのタイポグラフィ ケルムスコット版/森啓

勝見勝が情熱を傾けたピクトグラムの記事を割愛してもこれだけの項目が並ぶ。デザイン誌としては文字にかなりの関心を払っていたといえるだろう。
私は最初に勝見勝を“美学と倫理の権化”と呼んだ。美学、倫理と書くと高尚なことのように思われるかもしれないが、美学も倫理も文字もデザインも、日常のなかにこそ息づいている。その日常という場所に勝見勝は命を懸けていた。

(2001.9/9)