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おススメ本001

『ディック・ブルーナのすべて』監修ディック・ブルーナ、メルシス社 講談社 1999

子供が言語を獲得しようとする意志には恐るべきものを感じる。そんな恐るべき子供たちを相手にしている絵本作家の仕事に、見るべきものが多いのは当然かもしれない。優れた絵本作家は、レオ・レオーニやディック・ブルーナなど、もともとグラフィックデザイナーであることが少なくない。若きレオーニは、かつて第二未来派に参加し、バウハウスのデザイン理論を通過している。一方ブルーナはマティスに憧れ、デ・ステイルの影響を受けた。しかし、幸いなことに二人は、1920年代30年代に次々と現れた美術運動やデザイン理論の渦に巻き込まれずに済んだ。レオーニは1910年アムステルダム生まれ、ブルーナは1927年オランダのユトレヒト生まれ。二人は熱狂の時代からやや遅れて生まれてきたのである。そのおかげで彼らは、後方から未来派やダダやシュールレアリスムやデ・ステイルやバウハウスをみることができた。二人の作品は派手好みの美術運動や生硬なデザイン理論とは縁遠く、その親しみやすさによって世界の人々に愛された。しかし、だからといってミッフィーちゃんやあおくんときいろちゃんをなめてはいけない。本書『ディック・ブルーナのすべて』には、文字言語の創成に関わるヒントすら含まれているかもしれないのだから。ブルーナの人気が、彼の使う色と形にあることは間違いないが、実は線の表現こそが、その色と形を支える重要な要素であることを指摘しておきたい。どう転んでもCG育ちの世代には真似のできない何かがある。NHKの『お母さんといっしょ』を見ていても、クレイアニメに比べるとCGによる表現は妙にそらぞらしい。初めてミッフィーのビデオをブラウン管で見たときは、あまりに今までのアニメとはかけはなれた世界に驚いたものだった。そこはまったく独自の言語空間である。ブルーナはこう言っている。「私はいつも筆で描きます。手描きの線は震えますが、手描きとはそういうものです。」

(2001.9/11)