2005年05月31日 火曜日
通夜に来ていた仲間たちとうっすら酒を飲み、入社当時の思い出ばなしを語り合った。1993年の一月に外資系ソフトウエア会社に入社した私は、英語は話せない(今もだが)、パソコンはおろかワープロにすら触れたことがないという有りさまで、ほんとに自分で大丈夫かなという思いがどうしてもぬぐえなかった。入社して三日後くらいだったろうか、上司の部屋に行ってその気持を打ち明けた。すると上司は微笑みながらこう言った。「鈴木君、車の運転はできるかい?」私がはいと答えると「じゃあ大丈夫だ」。これだけである。このひと言ですっかり気が楽になった私は、以来タイプデザインの仕事に夢中になって取り組むようになった。この話を言い訳にするわけではないが、いまだに私のパソコン操作は「なんとか運転できる」ていどの腕前である。根っからの車好きにはかなわないと割り切って、私はこう考えることにした。その車に乗ってどれだけ素敵な場所に行けるか、素敵な仲間と一緒に景色を楽しみながら旅を楽しもう。私はそう望み、事実タイプデザインという仕事にそう臨んできた。脱輪したっていいじゃないかと。
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2005年05月28日 土曜日
わずかに残った青梅を漆鉢に盛ってみた。漆鉢は木雲からの引越し祝いである。御礼の葉書に「牡丹より小さき庵むすびけり」の句を書き付けて送ったところ、文字庵への贈答句が木雲から返ってきた。
梅若葉庵しづかに灯り初む 木雲
木雲の葉書にいわく『拙句が出来た後、「初むる」を調べると「特にそれが長く続く時のはじまりにいう」とありました』。いいなあこの注釈。しづかに点りました。しみじみ染まりました。初心の灯、消さないようにします。
さて、「梅若葉」ではなく「梅若菜」を使った次の句
梅若菜まりこの宿のとろゝ汁
は、江戸に旅立つ乙州に芭蕉が贈った餞(はなむけ)の吟である。『猿蓑 巻五』の発句としてつとに名高い。門人乙州は脇にこう付けた。
かさあたらしき春の曙
私も木雲の発句「梅若葉庵しづかに灯り初む」に脇を付けてみた。
春を盛りたる漆の器 茶門
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2005年05月27日 金曜日
期待していた梅の実はならずに落ちてしまった。残りの実も枝についたまま朽ち果てた。おそらくは剪定を怠ったためである。小粒な梅の実でにぎやかな枝ぶりは、その華やかさとは裏腹に大きな実りをもたらしてはくれない。人生にも剪定はつきものだが、剪定の際に生じる迷いは如何ともしがたい。
ほつほつと主はかなみ実梅落つ 茶門
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2005年05月26日 木曜日
女子美の佐賀さんレタースペースに来る。「書体図書館 Typeface Library」に一冊目の寄贈図書がもたらされた。蔵出し本二冊のうち佐賀さんが選んだのはPeter Karow『Typeface Statistics(書体統計学)』。編集会議が必要な例の構想にそろそろ着手します。
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2005年05月25日 水曜日
「人の気」を浴びたのはどうやら私だけではなかったようだ。場所にも、つまりレタースペースにも、私以外の人の気配が漂うようになってきた。誰かがまとってきた文字の塵がそこかしこに落ちている。塵に紛れているかもしれない種に耳を澄ます。
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2005年05月24日 火曜日
コンピュータのまえに座って作業をしていても、頭はあらぬことを考えたりしている。私は反省や後悔をあまりしませんが、反芻と内省はたびたびしています。前者は硬直を招き、後者は寛ぎをもたらしてくれるからです。
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2005年05月23日 月曜日
年をとると二日後に肉体疲労が訪れるといいますが、どうやら精神もそうらしく、先週人の気にあたりすぎたせいで今日はぼんやりしています。長椅子に横になって本を読んだり思案したり。雨の音がことさら強く感じられます。
牡丹より小さき庵むすびけり 茶門
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2005年05月21日 土曜日
新タイププロジェクト立ち上げメンバー三人による会合。次期プロジェクトの経過報告を行なう。トピックが豊富だったとはいえ、途中パスタをぱくつきながらぶっ通しで七時間。憑かれたように話しましたが、ぜんぜん疲れませんでした。
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2005年05月20日 金曜日
走りますよ。プロジェクトパートナーとコアメンバーの顔合わせの席でそう宣言した。なんとしてでもモノにしましょう。その思いを伝えるのに一年かかった。
Nさん、Kさん、きょうはお会いできてほんとに良かったです。加速しましょう。
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2005年05月19日 木曜日
今週は人と会う約束が集中してしまった。会合の前後にもメールが行き交うので読みこぼしや書き忘れがないかちょっと心配である。目まぐるしい展開は得意ではないが、これも訓練かと自分を試すような気持である。短い原稿を仕上げたので今日は高田馬場の古本屋をゆっくり巡りたい。そのあと友人たちと飲むというこれは私の好きな展開です。
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2005年05月18日 水曜日
池袋イルムス二階の喫茶店でA君とミーティング。複数の懸案事項あり。そのあと某デザイン事務所にてAXISフォント書体見本帳の打ち合わせ。見本帳らしからぬ見本帳になりそうです。
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2005年05月17日 火曜日
遠隔地にいるプロジェクトパートナーに「そろそろ始めましょうか」と投げかけたら、即座に「応」と返ってきた。2005年のキックオフです。
豊洲の集会所にて多摩美作品展の打ち合わせ。役割分担とタイムスケジュールの確認。
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2005年05月16日 月曜日
五月。春風駘蕩たるなかにもレタースペースにはいくども春一番が吹き抜けた。いろいろな人がもたらしてくれたその風は、旋風というには優しく、春風というに穏やかすぎる。スペースを空け、窓を開けたことで風の通り道ができたのかもしれない。
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2005年05月15日 日曜日
お天気雨がふったりやんだり。太陽の出入りも激しいが、人の出入りも激しい週末である。セリとシントが帰り支度をはじめるころアヤノとシュウコが、すこし遅れてオバヤとフキトがやってきた。ピザを大量に作って皆でつついて食べる。客の出入りを縫うようにして、私はレタースペースを行ったり来たり。
あばらやをいをりとおもふ春時雨 茶門
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2005年05月14日 土曜日
せりとしんとがうちに一泊。夕食には大人も子供も大好きなオムレツと子供に不評だったナメタマ汁。iBookを妻に譲ってしまったので、土日もレタースペースに来てメール打ったりサイトの更新したりしています。一人で仕事をしているかぎりにおいては、職住分離のメリットはほとんど感じられません。寒いです。
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2005年05月12日 木曜日
重要度Aランクのメールが送信先でスパムカットされていた。電話でご本人に確認して上の事情が判明したのだが、それにしても冷やりである。原因は、メールの送信者名とサブジェクト名が英文だったためで、我が身を振り返ってみても、たしかに読み飛ばす可能性は小さくない。スパムメールも憂鬱ですが、いきなり添付書類付きで送られてくる問い合わせメールにも苦慮しています。駆除するわけにもいきませんし。
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2005年05月11日 水曜日
レタースペースにてAXISフォントのライセンスに関するミーティングをA君と。タイププロジェクトの運営プランその他もろもろ話題は尽きず、三時間があっという間に過ぎてしまう。
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2005年05月10日 火曜日
組織化することによって個人の能力が補填/拡張される可能性に賭けたいと思う一方で、個人の限界が組織の限界であることを認めないわけにはいかない。だからこそ切磋琢磨が重要な意味を持つ。融け合うのではなく、研ぎ合うために。
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2005年05月09日 月曜日
胎動は目に見えない。感じるものである。五年間巣穴にこもってお腹の下で温めてきたタイププロジェクトという卵に胎動の兆しを感じている。タイププロジェクトの孵化は同時に、私自身の脱皮でもあるのかもしれない。
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2005年05月08日 日曜日
昨晩は池袋で木雲ナベさん宏一と酒を飲んだ。「文字庵」の名付け親である木雲がレタースペース初訪問。自宅に一泊してもらって久しぶりにゆっくり話し込む。
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2005年05月07日 土曜日
ブラインドと来客用のソファが届き、見違えるような佇まいの一角が出来上がりました。そして昨晩ついに、待ち焦がれた人からタイププロジェクトへの参加表明が届きました。職場の骨格と組織の中核が徐々にかたちをなしつつあります。
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2005年05月06日 金曜日
レタースペースの調度が少しずつ整いはじめてきた。台所の丸テーブル、レクチュア用のシートテーブル、会議用のホワイトボード、すべて来客に応じて買い足してきたものである。タイミング的に設置を手伝うはめになった「お客さん」もいます。レタースペースプロジェクト・レポート3をアップロードしました。
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2005年05月05日 木曜日
大型連休を利用して書類の整理。経理担当者に今年一月から四月までの収支を出してもらい、残り八ヶ月の経営計画を立てる。一から多へ、守勢から攻勢へ転じます。
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2005年05月04日 水曜日
家族をともない日帰りで飯能へ川遊びに行く。魚の泳ぎっぷりに見とれ、鳥の鳴き声に聴き惚れる。頭上を桜の花びらが舞うにいたっては桃源郷にいるがごとし。
尿(いばり)する子のそれぞれに藤の花 茶門
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2005年05月03日 火曜日
ときどき仕事場に遊びにくる息子のために即席の机をこしらえた。こしらえたと言っても押し入れ用の収納ケースを横だおしにしてそのうえに段ボールを載せただけのものである。決して広いとは言えないレタースペースにとってこの簡易さと柔軟性は魅力的だ。それに隣りで誰かが一心に作っているというのは張り合いがあるものです。「一意専心」はその人だけでなく周りへの影響も計りしれません。
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2005年05月02日 月曜日
心にかかる大事小事が快方に向かうにつれ、遅まきながら雪どけを実感する五月です。ほとんど反応のない茶門俳諧ですが、雪解けや食みこぼしたる握り飯に感想を書き送ってくれた方が二人います。私としては珍しく、口をついて出たままの一句でした。新居に初めて子供を連れていった日に恵まれた句に、ひとりは俳句の、もう一人は文字の、いわば師匠すじのお二人から新居祝いの言葉を頂いたような気分です。
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2005年05月01日 日曜日
レタースペースに来客。タイプデザインツールに関するミーティングをもつ。夕方からは池袋へ。無印良品で二人掛ソファを注文。そのあと園原先生と多摩美タイポグラフィ作品展示の打ち合わせをおこなう。
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