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日本数寄 松岡 正剛 春秋社 2000

吉右衛門さんはたしか白梅が好きやったな」と松岡氏の亡父が呟く。父君は、近江の植木屋に白梅をもってこさせ、紅梅の横に植えさせた。役者招きのその時期の梅はまだ蕾である。その父君の数寄者ぶり侘びっぷりを懐かしみ、面白がるところから本書は始まる。そして話しは中国へ飛び、万葉の梅に及ぶ。梅にまつわる漢詩、和歌、屏風絵、水墨と筆を走らせ、「そもそも道元が梅なのである」と断じ「寒中梅花」を坐らせた。襟をととのえ蕪村と竹田の温かい梅をいい、死の香りをすこしだけ漂わせ、最後に蕪村の句をおいた。

白梅の枯木にもどる月夜哉

「吉右衛門の白梅」で梳きはじめ、「蕪村の白梅」で梳きおえた。いや、終えてはいない。これはまだ第一章の第一話なのだ。鮮やかな口火はたった11ページ。透けそうな薄さと迅さである。縦横に梳き、一気呵成に巻いた「セイゴオ独吟半歌仙」。

全編書き下ろしで揺蕩(たゆた)うような『日本流』(朝日新聞社2000年刊)を仮名序とすれば、とりどりの雑誌へ寄稿した文章を再構成した『日本数寄』は、その真名序にあたるといってよかろう。語り口、文体を比較すれば一目瞭然である。

これからのデザイナーにはぜひとも読んでもらいたい一書なのだが、うたた読んでいると稀に警策が飛んでくる。なかでももっとも強烈な一檄はこれだろう。蔦屋重三郎にことよせて、「私が考えるネットワーカーは、やたらに人脈を広げたり人脈に頼っている者のことではなくて、曖昧な動向に敏感な人たちのこと、別の言葉でいえば『近さ』に勇気をはらった人々である」「ネットワーカーは自前が前提なのである。自前を惜しみ、他人の軒先でネットワーキングを画策する連中は本来のネットワーカーにはなりえない」

(2003.1/19) 『日本数寄』表紙と関連随筆

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