Type Project —visible, but invisible.

タイプデザイン

AXISフォント掲載記事

自分のフォントを持つ雑誌
フリーのタイプデザイナー、『AXIS』専用フォントを作る

『図書設計』2002 vol.58(日本図書設計家協会 2002年7月30日発行)の記事より転載
文:内澤旬子

2001年9月、雑誌『AXIS』が20周年を迎えるにあたり、メインの書体を変えた。これまでのモリサワの「新ゴ」から、『AXIS』で使うことを念頭に新しく作られた「AXISフォント」になったのだ。「AXISフォント」の企画を立て、制作にあたったフリーのタイプデザイナー、鈴木功氏にお話を伺った。

文体にあった書体を作りたい
「ぼくはもともと文字が好きだったんですよ。学生時代は文字そのものの構造が好きで、漢字の源流である甲骨文字について調べたりしていました。書体デザインを本格的に始めるようになったのは、やっぱりアドビに入社してからですね」

鈴木さんは大学を卒業して93年にアドビシステムズ(株)に入社、タイプデザイナーとして勤務したのち独立して、2001年にタイププロジェクトを設立した。
活版印刷時代から、欧米ではメディアが専用の書体を開発し使用することは、頻繁に行われ、そのメディアの「声」として「顔」として機能してきた。けれども日本の場合は文字数がアルファベットと違って非常に多いため、専用書体の開発は大新聞社をのぞいてごく僅かしかおこなわれてこなかった。
鈴木さんが専用書体を作ろうと思ったきっかけは、90年代半ばに行われた、フランスの新聞『Le Monde』、ドイツのデザイン誌『form』が行ったリニューアルにともなう専用書体の開発プロジェクトだった。

「日本でも書体を変えたい、専用書体ができないかと思いました。日本語の文体って色々ありますでしょ。柔らかかったり固かったり、カタカナの多い文体があったり。それなのに実際使われている本文書体はとても少ない。それが実に惜しい。こういう日本語にはこういう書体、ともっと使い分けられたら良いなと思いまして」

『AXIS』にねらいを定める
『AXIS』を選んだのは、ある程度決め打ちみたいな感じでした。2年も3年もかけて書体開発に付き合ってくれるところは、日本でそんなにないですよ。『AXIS』なら書体にも興味があるのかなと感じてたんで、ここなら大丈夫、逆に『AXIS』がだめなら他にない、ぐらいの気持ちで動いたんです。はじめに話を持ち込んだときはまだアドビにいましたが、会社の仕事じゃなくて、フリーとしてやりたいと言いました」

はじめのアイデアスケッチを見せていただくと、なんの升目もない白無地の紙にいきなり黒インクの力強い線で、五センチ四方くらいの文字がならぶ。

「升目を書いてしまうとだめなんです。面白くないんですよ。鉛筆で下書きも書かずにざざっとかいてしまうんです」

こう言っては失礼だが、鈴木さんの普通の書き文字はあまり綺麗とは言えない。それなのにノートにかかれた曲線はとてもフリーハンドとは思えない「形」ができている。不思議なものだ。それにしても七千余りの漢字をひとりで作るのは、いくらパソコンによって作業が効率化したとはいえ、さぞかし大変だったろう。

「今回は『AXIS』の文体を意識して書体を作りました。具体的に言えばカタカナが多くて、欧文との混植が多い文体ですね。条件がかなり細かく設定できているからやりやすかったです。出来上がってからも、実際の記事を貼り込んでみて何度もシュミレーションを繰り返しました」

『AXIS』での欧文併記に対応し、鈴木さんはAXISフォントの欧文デザインを小林章さんに依頼した。以前本誌でも紹介した通り、小林さんは海外で高く評価されている欧文タイプデザイナーで、2001年からドイツのライノタイプライブラリー社のタイプディレクターに就任した。和文書体を理解しながら質の高い欧文書体をデザインできる、貴重な人材だ。なんども打ち合わせを重ね、混植したときにも自然な流れを持った文になるようにつくられている。和文書体についている欧文を打ったときによくある、あのぎくしゃくした感じは全くない。

細身の文字をゆったりと
サンプルを見ればわかるように、AXISフォントはモリサワの新ゴと同じ、サンセリフ系のモダンな書体だ。組まれた誌面は、興味のない人には新ゴから変わったことに気がつかないかもしれない。比べてみると、ゆったりとしていて、私個人的には上品になった印象をうける。

「AXIS書体のセールスポイントは、わかりやすいところでは見出し用のウルトラライトがあることなんですけれど、実は一番大きなねらいは、レターフェイスなんです。ここ20年くらいの流れで、写植の時代から詰め打ちをデザイナーが好んでやってきたわけですが、それがはたして文章や読み手にとっていいのかどうか、そんな提案を込めて広めにとっています」

しかし活字と違ってデジタルフォントではいくらベタ打ちの文字間がゆったりと設定されていても、デザイナーの作業ひとつでいくらでも文字間を詰めることはできてしまう。

「それはしょうがないですね。最終的には使う人の自由なわけですから。むしろどんな使い方をしていただけるのか、とても楽しみです。書体って声みたいなものだと思うんです。同じ言葉でも声音が違えばがらりと印象が変わる」

この新しい「声」にこれからどんな言葉がのっていくのか、『AXIS』から広がって、良い意味で鈴木さんの予想を裏切るデザインとの出会いが重なることを期待したい。我こそはと思うデザイナーは以下のURLへ!!!

--鈴木さんにお話を伺ったのが昨年秋。あれから半年あまりが過ぎ、AXISフォント試用版の無料ダウンロードがはじまろうとしています。
興味のある方は、http://www.typeproject.com/ へ。AXISフォントが出来るまでのこまかな経緯も載ってます。
AXISフォントは、新たなシリーズの展開へと始動中  (2002.8/9 アップロード)


AXIS Light サンプル (axis_l.pdf:36K)